今日から使える3つの必要ツールの準備法
目次
- 今日から使える3つの必要ツールの準備法
- なぜこの3つなのか
- ツール1:表計算(GoogleスプレッドシートかExcel)
- ツール2:銀行明細(直近3ヶ月分)
- ツール3:請求・受注台帳(入金予定の一覧)
- 3つのツールが揃った状態のイメージ
- 「完璧な台帳」より「今日の不完全な台帳」
- 今日やること(チェックリスト)
第0章・話9|はじめに
到達目標:この連載を動かす3つのツールを、今日中に「使える状態」にする。 今日やること:表計算ツールを開き、銀行明細を手元に用意し、入金一覧を1枚にまとめる。 必要ツール:GoogleスプレッドシートまたはExcel、ネットバンクのログイン情報、請求書・受注台帳。
道具が整っていなければ、仕事は始まらない。
大工が現場に鋸を忘れてきても、家は建てられない。料理人が包丁を研いでいなければ、食材を活かせない。経営者が財務ツールを持っていなければ、資金は管理できない。
この話では、この連載全体を動かすための「3つの道具」を完全に整える。
内容はシンプルだ。でもこの3つが手元にある状態とない状態では、第1章以降の実装スピードが、体感で3倍は変わる。
なぜこの3つなのか
この連載が扱う財務管理のすべては、突き詰めると3つの情報源から成り立っている。
**「お金がどこにあるか」**を教えてくれるのが、銀行明細だ。 **「お金がいつ入ってくるか」**を教えてくれるのが、請求・受注台帳だ。 **「2つを統合して未来を見せる」**のが、表計算ツールだ。
この3つが揃って初めて、13週CFが作れる。KPIが追える。月次レビューが回る。
逆に言えば、この3つさえ整えれば、財務管理の「器」は完成する。高価なソフトも、専門家も、まず最初には必要ない。
ツール1:表計算(GoogleスプレッドシートかExcel)
まず結論から言う。どちらでも構わない。今日すぐ開けるほうを選ぶ。
Googleスプレッドシートは、Googleアカウントがあれば無料で使える。スマホからも確認できる。複数人での共有・同時編集が簡単にできる。これが最大の強みだ。
Excelは、PCに入っていれば追加費用なしで使える。関数の種類が豊富で、大量のデータ処理に強い。ローカルで管理したい場合に向いている。
私がすすめるのはGoogleスプレッドシートだ。理由は一つ、**「どこからでも見られる」**からだ。
経営者は常にデスクにいるわけではない。移動中に、現場で、深夜に、「今週の残高はいくらだっけ」と確認したくなる場面が必ずある。スマホで即座に開けるGoogleスプレッドシートは、その瞬間に答えを出せる。
Excelしかない環境なら、OneDriveやDropboxと組み合わせてクラウド保存する設定にすると、同様に使える。
今日やること: 新しいスプレッドシートを作り、ファイル名を「財務管理_会社名_2025」にする。シートを3枚作り、それぞれ「13週CF」「KPI」「リスク登録票」と名前をつける。中身は空でいい。器を作ることが今日のゴールだ。
ツール2:銀行明細(直近3ヶ月分)
銀行明細は、「会社のお金の動きの履歴」だ。
これを手元に置いておくと、13週CFの「出金欄」を埋めるときに圧倒的に速くなる。「先月、仕入れにいくら使ったっけ」「光熱費は毎月いくらくらいだったか」という問いに、即座に答えが出る。
取得方法は2つある。
ネットバンクの場合(推奨): ログインして「明細照会」または「入出金明細」のページを開く。直近3ヶ月分を選択してCSVまたはExcel形式でダウンロードする。多くの銀行でこの機能は無料で使える。ダウンロードしたファイルを、先ほど作ったスプレッドシートに別シートとして貼り付けておく。
通帳の場合: 直近3ヶ月分の記帳をATMで済ませておく。手入力が必要になるが、金額と日付を「出金カテゴリ別」に集計するだけでいい。人件費・家賃・仕入れ・広告・税・その他の6カテゴリに分けて月別合計を出す。
私が貿易事業を立ち上げたとき、最初にやったことの一つがこれだった。飲食で失敗した反省から、「お金の動きを毎週見る」習慣を先に作ることにした。銀行明細をダウンロードして眺めるだけで、「この費用、毎月出ていたのか」という気づきが必ずある。
今日やること: ネットバンクにログインし、直近3ヶ月分の明細をCSVでダウンロードする。ダウンロードできたら、スプレッドシートの「13週CF」シートの隣に「明細」シートを作って貼り付けておく。
ツール3:請求・受注台帳(入金予定の一覧)
3つのツールの中で、最も「作られていない会社が多い」のがこれだ。
請求・受注台帳とは、「誰から・いつ・いくら入金される予定か」を一覧にしたものだ。
これがなければ、13週CFの「入金欄」が空白になる。入金欄が空白なら、週末残高が計算できない。週末残高が計算できなければ、危険週が特定できない。
入金の見えない13週CFは、羅針盤のない船と同じだ。
ビルメンテナンスや清掃、原状回復、ハウスクリーニングのようなBtoB月次契約ビジネスは、入金の予測精度が比較的高い。毎月同じ顧客から、ほぼ同じ金額が入ってくる。この「安定した入金」こそが、BtoBビジネスの最大の強みだ。
財務コンサルやCFO代行も同様だ。月次顧問契約であれば、入金日と金額がほぼ固定されている。
この「安定入金」を台帳に落とすことで、13週CFの精度は飛躍的に上がる。
台帳に入れる最低限の項目はこの5つだ:
項目 内容 顧客名 会社名または個人名 契約金額 月額または都度金額 請求日 毎月何日に請求するか 入金予定日 請求から何日後に入金されるか 確度 A(ほぼ確実)/B(見込み)/C(可能性あり)
確度Aだけで13週CFを作り、確度BとCは「上振れ余地」として別管理する。この分け方が、計画の精度と現実感を両立させる。
今日やること: スプレッドシートに「入金台帳」シートを1枚追加し、上記5項目の列見出しを入れる。今日契約している顧客・案件を思い浮かべながら、確度Aの入金予定だけ入力する。完璧でなくていい。今日わかっている範囲で埋めることが目的だ。
3つのツールが揃った状態のイメージ
今日この3つを整えると、手元にこういう状態が生まれる。
Googleスプレッドシートに4つのシートがある。「13週CF」「KPI」「リスク登録票」「明細」、そして「入金台帳」だ。
「明細」シートには直近3ヶ月の出金履歴が貼り付けてある。人件費・家賃・仕入れ・その他のカテゴリ別の月次平均が、ひと目でわかる。
「入金台帳」シートには、今月から13週先までに確度Aで入金される予定が並んでいる。ビルメンテナンスの月次清掃料、原状回復の受注分、コンサルの顧問料。
この2つのシートを見るだけで、第1章で作る「13週CF」の骨格データが手元に揃う。第1章の最初の話を読み始めたとき、「さあ数字を入れよう」と即座に作業を始められる。
道具が整っていることの価値は、「始められる」ことだ。
「完璧な台帳」より「今日の不完全な台帳」
ここで一つ、正直に言っておく。
今日作る台帳は、おそらく不完全だ。抜けている顧客がある。金額が曖昧な案件がある。確度の判断が難しいものがある。
それでいい。
不完全な台帳でも、「まったくない状態」よりはるかにいい。不完全なものは、運用しながら改善できる。ないものは、改善する起点がない。
私がコロナ禍で事業を生かし続けられた大きな理由の一つは、「不完全でも仕組みを動かし続けた」ことだ。13週CFが完璧な精度でなくても、毎週更新し続けることで、傾向が見えてくる。傾向が見えれば、仮説が立てられる。仮説が立てられれば、検証できる。
動き続ける不完全な仕組みは、止まっている完璧な設計よりも強い。
今日やること(チェックリスト)
□ Googleスプレッドシートに「財務管理」ファイルを作成し、
「13週CF」「KPI」「リスク登録票」「明細」「入金台帳」の
5シートを作成した(中身は空でいい)
□ ネットバンクにログインし、直近3ヶ月分の明細を
CSVでダウンロードして「明細」シートに貼り付けた
□ 「入金台帳」シートに確度Aの入金予定を
今日わかる範囲で入力した
この3つが完了したとき、この連載の「器」が完成する。次の話から始まる第0章の後半は、この器に「思想」を流し込んでいく。
次回(第0章・話10)では、著者が現在経営する6社のホールディングス構造を初公開する。なぜ各社に社長と役員1名だけを置き、すべてを外注化したのか。なぜ自分自身は4時〜10時の時間設計で事業を回せるのか。「資金を絶やさない設計」と「自他同然の理念」が、どのように6社の経営構造に結実しているかを、具体的に解説する。
道具が揃った。次は、使い方を学ぶ番だ。


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