今日から始める3ステップ

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13週CF作成・JFCガイド確認・月次レビュー日程登録

第0章・話3|はじめに


「いつかやろう」は、永遠に来ない。

経営書を読んで「これは重要だ」と思う。手帳にメモする。でも翌日には目の前の仕事に追われて、そのメモは二度と開かれない。気づけば3ヶ月が経ち、また同じ本を読んで「これは重要だ」と思っている。

私にも、その繰り返しの時期があった。

変わったきっかけは、「今日やること」を極端に小さくしたことだ。「13週CFを完成させよう」ではなく、「今日は列見出しを入力するだけ」。「月次レビューを習慣化しよう」ではなく、「今日はカレンダーに1時間ブロックを入れるだけ」。

小さいアクションは、完了できる。完了すると、次が動き出す。

今回は、この連載を始めるにあたって「今日中に完了できる3つのステップ」を届ける。内容は単純だ。でもこの3つを今日やるかどうかが、この連載が「読んで終わり」になるか「事業が変わる1年」になるかを、最初の段階で分ける。


ステップ1:13週キャッシュフローの「器」を今日作る

13週CFとは何か、詳しい解説は第1章に譲る。

今日やることは「完成させること」ではない。「入力できる状態」を作ることだ。

具体的には、この作業だけやればいい。

① GoogleスプレッドシートかExcelを開く

新しいシートを作り、名前を「13週CF」にする。それだけ。ファイル名はなんでもいい。「事業計画2025」でも「資金管理」でも。とにかく「13週CF専用のシート」が1枚存在する状態を作る。

② 列見出しを入力する

A列に「項目」、B列から右に「今週」「2週目」「3週目」……と13週分の週ラベルを入れる。15列あれば十分だ。B1に「今週」と入れたら、C1に「2週目」、D1に「3週目」と続ける。これだけで、今日のステップ1は完了だ。

③ 行の大分類を入れる(余裕があれば)

時間があれば、A列に行の見出しも入れておく。「入金合計」「出金合計」「週末残高」の3行が最低限だ。入金の内訳(売上・補助金・融資)、出金の内訳(人件費・仕入・広告・税金・返済)は、第1章で丁寧に解説するので今日は空でいい。


ここで大切なことを一つ言っておく。

「完璧な13週CFを今日作ろう」と思わなくていい。

完璧を目指すと、始められない。列見出しが入っているだけのスカスカなシートでいい。大事なのは「今週から入力を続ける器がある」という状態だ。

私が最初の会社でやっていなかったのは、この「器を作る」という行為そのものだった。「いつか時間ができたらちゃんと作ろう」と思っているうちに、資金が枯れた。

シートを開いたら、もう半分終わりだ。


ステップ2:JFCクイックガイドで「当面資金の当たり」を立てる

日本政策金融公庫(JFC)については第2章で詳しく解説する。今日やることはもっとシンプルだ。

「自分の会社は、今JFCを使うべきフェーズにあるか」を判断する。

この判断に必要な問いは3つだけだ。

問い①:創業から何年か?

JFCの「新創業融資制度」は、創業前または創業後おおむね7年以内の事業者が対象だ。まだ利用できる期間にあるかどうかを確認する。

問い②:今、資金に不安はあるか?

「今すぐ足りない」でなくても構わない。「このまま売上が伸びなければ、3ヶ月後に厳しくなる」という感覚があるなら、今が動くタイミングだ。JFCの申請から融資実行まで、通常1〜2ヶ月かかる。感じてから動いても、すでに遅いことがある。

問い③:設備投資や運転資金の調達を検討しているか?

新しい機材を買う、採用を増やす、マーケ費用を先行投資する。そういった「先に出ていくお金」のためにJFCを使うことができる。


この3問に1つでも「はい」があれば、今日中にJFCのウェブサイトを開いてほしい。

日本政策金融公庫の公式サイト(jfc.go.jp)には、制度の概要と、最寄りの支店への相談申し込みフォームがある。今日は「相談を申し込む」ボタンの場所を確認するだけでいい。押さなくていい。「押せる状態にある」ことを確認する。

なぜこれだけでいいのか。

行動の最大の障壁は「やり方がわからない」ではなく、「存在を意識していない」ことだ。JFCという選択肢が自分の手の届くところにあると知ることで、第2章を読んだとき「これは自分の話だ」と感じられるようになる。

今日のステップ2は、「JFCが選択肢の一つだ」と意識に登録することだ。


ステップ3:月次レビューの日程を今日カレンダーに入れる

この3つのステップの中で、最も軽視されやすいのがこれだ。

「月次レビューなんて、もう少し事業が軌道に乗ってからやればいい」

そう思う気持ちはわかる。でもこの考え方が、後で大きなコストを生む。

月次レビューとは何か。詳細は第5章で解説するが、一言で言えば「毎月1回、財務数字と事業の状況を、決まったアジェンダで振り返る会議」だ。

創業期こそ、これが必要だ。

なぜか。創業期は「計画通りに進まないこと」が当たり前だからだ。毎月数字を確認して修正する習慣がなければ、気づいたときには取り返しのつかない状態になっている。月次レビューは、問題が小さいうちに発見するためのレーダーだ。


今日やることは、カレンダーに1時間のブロックを入れることだ。

来月の特定の日に「月次レビュー」と入力して、繰り返し設定をオンにする。毎月第2火曜日の午前10時でも、毎月末の金曜日の午後でもいい。自分が確実に守れる日時を選ぶ。

ただし、一つだけルールがある。

「毎月同じ曜日・同じ時間帯」にすること。

月次レビューは「重要だが緊急ではないタスク」だ。日程が固定されていないと、毎月「来月でいいか」と先延ばしになる。固定化することで、他の予定より先にブロックされる。「この時間は絶対に空けておく」というアンカーを先に打つ。

今日だけで全部準備しなくていい。参加者も、アジェンダも、後で決めればいい。今日は「日程だけカレンダーに入れる」。それだけでステップ3は完了だ。


3ステップが揃ったら何が起きるか

この3つを今日中に完了した状態を想像してほしい。

デスクの前には、13週CF用のシートが開いている。13列の週ラベルが入力されていて、「来週からここに数字を入れていく」という準備が整っている。

ブックマークにはJFCのサイトが登録されていて、「第2章を読んだらここを開こう」という意識がある。

カレンダーには来月の月次レビューの予定が入っていて、毎月同じ日時に繰り返されるよう設定されている。

これだけのことで、何かが大きく変わるわけではない。13週CFが完成したわけでも、融資を申し込んだわけでも、月次レビューを実施したわけでもない。

でも、「仕組みが動き始める状態」が生まれた。

器のないところに水は溜まらない。器を作ることが、すべての始まりだ。


「すぐやる」ことの本当の意味

私は一度、資金ショートで会社を畳んだ。

あのとき何が足りなかったかを、今でも時々考える。情報は持っていた。意欲もあった。チームも顧客もいた。

足りなかったのは「危機の前に手を打つ習慣」だった。

13週CFがあれば、危険な週は事前に赤く染まる。JFCを知っていれば、資金が厳しくなる前に相談できる。月次レビューがあれば、問題が小さいうちに発見できる。

この3つは、どれも「問題が起きてから使うもの」ではない。「問題が起きる前に機能する仕組み」だ。

そして仕組みは、作ってから機能するまでに時間がかかる。今日作った13週CFが本当に役立つのは、来月か再来月だ。今日申し込んだJFCの相談が融資実行につながるのは、1〜2ヶ月後だ。今日入れた月次レビューの予定が最初に機能するのは、来月だ。

だから「今日やる」のだ。

未来の自分を助けるためのアクションは、未来の自分には取れない。今日の自分にしか取れない。


今日やること(チェックリスト)

□ GoogleスプレッドシートかExcelに「13週CF」シートを作成し、
  週ラベルの列見出し(今週〜13週目)を入力した

□ JFCのウェブサイト(jfc.go.jp)を開き、
  相談申し込みフォームの場所を確認した

□ 月次レビューの日程を来月のカレンダーに登録し、
  毎月の繰り返し設定をオンにした

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3つすべてにチェックが入ったら、今日のこの話は完了だ。

1つでも入っていなければ、今日中に戻ってきてほしい。明日ではなく、今日だ。


次回(第0章・話4)では、著者が最初の会社を畳んだ実体験を、数字とともに詳しく振り返る。「資金計画の甘さ」とは具体的にどういう状態なのか。何週間前から兆候があったのか。あのとき13週CFがあったら何が変わっていたのか。

失敗の記録は、次に同じ失敗をしないための最良の教科書だ。

「いつか」は今日だ。

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